第二十七回 芸術の秋 …敦煌(とんこう)巡礼記録 (おまけ)

第二十七回 芸術の秋 …敦煌(とんこう)巡礼記録 (おまけ)

暖房が不可欠な寒さが続いている、今日この頃。

「スポーツの秋」「読書の秋」「食欲の秋」など、さまざまな形容詞が付けられる秋ですが・・・

今回は「芸術の秋」に焦点を当て、しばらく連載していた「敦煌巡礼記録」に交え、1988年に公開された「敦煌」という映画をご紹介いたします。

 

 

この「敦煌」は、 井上靖さんによる同名小説を、中国でロケーションを敢行・セットを設営し、総製作費45億円を費やして作り上げた大作映画です。

「新幹線大爆破」等で有名な佐藤純彌さんが監督を務めているほか、佐藤浩市さん・西田敏行さん・柄本明さん・蜷川幸雄さんら、名だたる俳優が出演していることでも話題になったそうです。

(筆者は公開当時、まだ生まれておりませんでした・・・)

 

 

(映画のために作られたセット。

いくつか小さな仏塔が見えますが、半分は本物で半分はセットとして作られたレプリカだそうです。

これはバスから遠目に見ながら撮影した写真なので、違いが全くわかりませんでした)

 

 

 

 

ストーリーをかなり大まかに約すと、以下のようになります。

 

 

舞台は今から約千年前、宋(そう)の時代の中国・・・。

佐藤浩市さん演じる主人公は科挙(いわゆる官僚)を目指すも試験に落ち続け、西夏(せいか 今日における中国の北西部。漢字のような独特の文字「西夏文字」が有名)に希望を求め、遥かなシルクロードを旅立ちます。

その途中、ふとしたきっかけで西田敏行さん演じる西夏の軍人の部下に就くことに。

人々との出会いや戦いを交えながら軍人とともにシルクロードを旅し、敦煌に辿り着いた主人公は、やがて敦煌の文化遺産を守るため奮闘することになります。

(なお、この映画・原作小説はともにフィクションです。)

 

本作は大人数のキャストと広大な中国ロケ・豪華なセットの設営のためか、CGを使っていないのにも関わらず大迫力の映像が楽しめます。

特に砂漠で起こる百人単位での騎馬戦は、時代劇でもなかなか見ることができない壮大な見せ場ではないでしょうか。

また前回ご紹介した「莫高窟 ばっこうくつ」がロケ地として使われているほか、夕焼けの中を歩くラクダの商隊など・・・シルクロードの雰囲気を存分に感じとることができます。

エンディングのスタッフロールでは、莫高窟内の有名な仏画・仏像も紹介されています。この映像を見れば、このブログでは写真をご紹介できなかった洞窟内部がどのようになっているのかを知ることができます。

 

本作は録音環境が悪かったのか一部の役者の声が聞き取りにくかったり、小説を映画の尺に収めるために展開が駆け足であったり・・・と、やや気になる点も見受けられますが、自宅に居ながらにしてシルクロードを味わうという点においては最良の映像作品と言えるかもしれません。

DVDが比較的簡単に入手でき、レンタル店の邦画コーナーにも置いてあるかと思われますので、「芸術の秋」に是非、この一本はいかがでしょうか?

 

 

 

劇中の後半。莫高窟内の仏像を前にして、主人公は思いを巡らせます。

「この中に居ると、仏の世界に居るような気がしてくる・・・」

私が莫高窟の中に入った時に言葉にできなかった感動を、うまく言語化してくれたような気がしました。