第一〇二回 芸術の秋 【エッセイ:『ボクは坊さん。』】
徐々に秋から冬へと移ろいつつありますが…。
今年も例年通り“芸術の秋”として、仏教関係の芸術作品をご紹介させていただきます。
今回ご紹介するのは、四国八十八ヶ所霊場 第57番札所:栄福寺様(愛媛県・高野山真言宗)にて御住職を勤める白川密成氏が著したエッセイ集『ボクは坊さん。』です。
先代住職が突然倒れたことで、若干二十四歳にして住職となった白川氏。
本書では『性霊集』といった弘法大師空海の著作や『法句経』などの初期仏教経典に説かれた文章を引用しながら、白川氏の修行時代やお寺で過ごす日常の出来事が時に可笑しく時に真面目に記されています。
同じ僧侶の立場からすると、本書は思わず「あるある」と共感を抱くエピソードが多く、また白川氏の博識さ・感性の豊かさに驚かされ非常に楽しめました。
一方僧侶でない方が読んでも、「ひとりの人間」としての僧侶の姿を見ることで、「お坊さん」の存在を身近に感じてもらうことができるかもしれません。
仏教的な専門用語も少々登場しますが、読みながらそれらに関心を抱いていただければ幸いです。
- 『ボクは坊さん。』書誌情報
著者 白川密成
初版 二〇一〇年 二月十三日
発行 (株)ミシマ社 - なお、本作は二〇一五年に、物語仕立ての大幅なアレンジを加えられ映画化されました。
「チーム・バチスタ」シリーズ等でお馴染みの伊藤淳史氏が主演を勤めています。