第二十二回 宝輪の修繕

第二十二回 宝輪の修繕

先日、慈眼寺の山門の軒飾りを修繕いたしました。

以前は赤サビが目立っていましたが、現在では見違えるような輝きを放っています。

 

 

 

 

船を操る舵に似たこの軒飾りは、「宝輪(ほうりん)」もしくは「輪宝(りんぼう)」と呼ばれる仏具です。

 

これは、古代インドの伝説上の王様の持ち物であった「輪」が「煩悩を打ち砕く仏さまの教え」を象徴するシンボルとして解釈され、仏教に取り入れられたものです。

インドの伝説に登場した道具が仏教に取り入れられた…という点において、前回の記事でご紹介した「五鈷杵(ごこしょ)」とよく似た由緒があるといえます。

 

また、仏さまの教えを指して「法輪(ほうりん 法は<教え>の意)」と呼ぶこともあります。

教えを説くことが「輪を転がす」ことにたとえられ、説法そのものが「転法輪(てんぼうりん)」とも称されるようにもなりました。

(お釈迦さまが初めて行った説法を「初転法輪」と呼ぶのは、このためです。)

 

 

この「輪を転がす」ということが、具体的に示されたものがあります。

 

昨年(平成二十八年)、日本各地の博物館にて「黄金のアフガニスタン 守り抜かれたシルクロードの秘宝」という企画が開催されていました。

この展示品の中に、アフガニスタンの遺跡で発掘された金製のメダルがありました。

このメダルの片面には、宝輪を転がす人物が描かれています。

 

<写真はこちらをご覧ください 「第三章」インド・メダイヨン参照>

 

ここに表されているのは「輪を転がす」すなわち「説法をする」人物…お釈迦さまそのものが示されているのではないか、と考えられています。

これは紀元前一世紀頃に造られたたいへん古いもので、このメダルこそが「世界最古の仏像」ではないか、という説も存在するそうです。

 

このメダルは昨年東京国立博物館でも展示されており、私も実際に鑑賞して参りました。

わずか二センチ足らずの大きさのメダルに、底知れぬ偉大さを感じたのは気のせいではない…と感じています。

 

 

仏具は無数に存在し、そのどれもが立派な由緒や、興味深いエピソードを有しています。

しかし、その多くは皆様にあまり馴染みの無いものばかりと存じますので、知っていただく機会がなかなかありません。

そんな仏具に少しでも興味を持っていただけるよう、この寺報において定期的にご紹介していきたい…と思っています。

 

※ 古代の戦車(馬車のようなもの)の車輪とも、輪っか状の武器ともいわれています。