第二回 彼岸花
本日は秋分の日です。秋のお彼岸も、早くも中日となりました。
慈眼寺では毎年この時期になると、お墓参りに訪れる方々をお出迎えするかのように咲く花があります。美しい朱色の彼岸花(ひがんばな)です。
「彼岸花」という名前は、秋のお彼岸の時期に開花するために付けられたと考えられています。また、地方によってさまざまな別名があり、その呼び名は千種類にも及ぶそうです。特に有名なものとして「まんじゅしゃげ」という呼び名がありますが、これは『法華経』『悲華経(ひけきょう)』などのお経に登場する天界に咲く花「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」に由来する名前です。
さて、「美しい花にはトゲがある」ということわざがあります。彼岸花には薔薇のようなトゲこそありませんが、攻撃的な一面があることをご存知でしょうか。
花びら・茎・球根…。彼岸花はその全てに、有毒な成分を含んでいます※。この毒は摂取すると命に関わる場合もあり、虫や動物が避けて通るほどの強さを持っています。
かつて、彼岸花は水田のあぜ道や墓地に数多く植えられました。見た目が綺麗だから植えられたわけではなく、水田や墓地を荒らす虫・動物が近付かないように植えられたといいます。今日、境内で何気なく咲いている彼岸花も、大昔にお墓を守るために植えられたものかもしれません。
※強い毒性を持つ彼岸花ですが、適切な処理をすることで、食用や薬用となるそうです。かつてはそういった目的のために栽培される場合もあったと伝えられています。