第三十三回 月の兎とお釈迦さま

第三十三回 月の兎とお釈迦さま

今年の一月二日・三十一日に、「スーパームーン」という天体現象がありました。

これは月の地球への最接近と満月・新月が重なることにより、月がいつもより大きく見える現象です。

月の表面に浮かんだ模様も、普段よりはっきりと見ることができました。

 

 

月の模様は、様々な姿に見立てられることで有名です。

日本においては、兎が餅つきをしている見え方・伝説が、特に有名ではないでしょうか?

 

月に兎が住むという伝説は、実は初期仏教の『ジャータカ』という仏典に説かれる、お釈迦さまが前世で兎だった頃の物語に由来する考えられています。

そのエピソードは、次のようなものです。

 

 

ある日兎や猿などの動物達が、施しを求める老人に出逢いました。

動物達は老人のため食料を探すことにしましたが、兎だけは何も探し当てることができませんでした。

何とかして老人の力になりたいと考えた兎は、焚火の中へ飛び込んで、自らの肉を食料として捧げました。

その後兎は月へと昇り、大いなる慈悲の心を後世まで伝え続けています・・・。

 

 

この兎はお釈迦さまの前世の姿ですから、月で餅をつく兎もまた、お釈迦さまが姿を変えたものと言えるでしょう。

お釈迦さまは遥か彼方の月からも、我々を見守ってくれているのかもしれません。

 


 

※参考文献

中村元・増谷文雄監修『仏教説話体系 4 ジャータカ物語(一)』 すずき出版

p.111〜p.119 「ウサギの布施(ジャータカ三一六)」より

この『ジャータカ(Jātaka)』とは、お釈迦さまが様々な前世にて体験したとされるエピソード等が説かれた初期仏教の仏典です。

ジャータカで説かれた多くの物語は世界各地に伝わり、『イソップ物語』や『今昔物語』等、世界中の文学に影響を与えたと考えられています。