馬頭観世音菩薩像

馬頭観世音菩薩像

 

 石仏群の中で特に特徴的な仏さまが、この馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)です。略して、馬頭観音(ばとうかんのん)とも呼ばれています。

 馬頭観音とは、名前の通り、頭上に馬の頭を乗せた観音さまです。まるで大食いの馬のように、煩悩などを食べつくして人々を救うと言い伝えられています。六観音の一種であり、インドの神様であるヴィシュヌ神の化身が由来とされています。

 一般的に、観音さまは優しい表情をしていますが、この観音さまは恐ろしい表情(忿怒相 ふんぬそう)をしています。そのため、八大明王(はちだいみょうおう)の一つにも数えられ、「馬頭明王」などと呼ばれることもあります。「明王」とは悪魔を打ち倒す仏教の守護神であり、怒りの表情を浮かべていることが多い仏さまです。

 慈眼寺の馬頭観音像は、文化十三年(1816)に建立されたもので、眼の病の回復や旅行・交通安全のご利益があると伝えられています。
また、力強い表情が特徴的な像の台座には、観音さまの本地仏である阿弥陀如来の名号「南無阿弥陀仏」が記されています。

 

 

 この馬頭観音像は、青梅街道と石神井道(丸ノ内線・新中野駅付近より石神井・上清戸を通って所沢へ伸びていた、かつて存在した道。今日の「追分通り」)とが分岐する三叉路に安置されていました。像の土台は道しるべとなっており、左側面には「あふめ道(青梅街道)」・右側面には「いくさ(井草)道」と記されています。

 

 

 

※現在の青梅街道・鍋屋横丁近辺の地図と、江戸時代末期の古地図との比較。
古地図は、1976年 中野区教育委員会発行『路傍の石仏をたずねて』(P.68)より引用しました。
「文化十三年 道しるべ 右いぐさ道 左青梅道」と記されております。

 

 

2016年6月14日