第四十二回 興教大師・覚鑁上人
毎年六月、真言宗豊山派などの大きな寺院において、「両祖大師誕生会」と呼ばれる行事が行われています。
この行事は、ともに六月生まれと伝えられる真言宗の祖・弘法大師空海と、中興の祖である興教大師覚鑁(こうぎょうだいし・かくばん)の生誕をお祝いするものです※。
真言宗を大成した弘法大師空海は、義務教育の教科書に載るほどの有名な人物です。
しかし興教大師覚鑁は、我々真言宗の僧侶以外にはあまり知られていない人物かもしれません。
平安時代後期の1095年に生まれた覚鑁は、16歳にして僧侶となります。
空海以来の天才と称された覚鑁は、空海の教えに新たな解釈を加えるなど、真言宗の発展に尽力していきました。
当時、真言宗の総本山である高野山は荒廃・衰退していました。そのため覚鑁は再興を目指しましたが、それを快く思わない派閥によって妨害を受け、遂には命を狙われるようになってしまいます。
高野山を逃げ延びた覚鑁は、今日における和歌山県岩出市に居を構え、根来寺(ねごろじ)という大寺院を建立しました。
真言宗に新たな風を吹き込んだ覚鑁の教えは根来寺の僧侶に受け継がれ、やがて真言宗豊山派の総本山・長谷寺などに伝えられて、我々の元に至っているのです。
※お二人は共に六月生まれと伝えられております。
しかし空海の誕生日(六月十五日)はあくまで伝承上のものであり、覚鑁の誕生日(六月十七日)は旧暦上の日付によるものです。
なお、画像は新義真言宗総本山・根来寺様のWEBサイトより拝借致しました。